[写真/Netflix]
ネットフリックスのドラマ、クイーンズ・ギャンビットとりあえず4話まで見ました。
思ったのは、もちろんその世界の時代と現代では常識が違います。
今回はその常識を1話と2話の描写の解説をしたいと思います。
注意点として、私も生まれる前の話なので伝え聞いただけというものばかりで実際そうだったかはしっかりとは分からないです。
では解説に参ります。
チェス界は男性社会?
初版が1967年に出たと思われる本、『the psychology of the chess player』によると、50年代くらいまでのチェス界について、正確な統計ではない体感だがと前置きがあるものの、男性と女性の比率は100対1くらいだろうね。という記述があったためとてもとても偏っていたと思われます。
ちなみに現在でも私のチェスを主に扱っているYouTubeチャンネルの視聴者女性比率も直近28日で5%あったらいい方だと思うのであまり変わっていないと言えば変わっていないかもしれません。
その50年代60年代の時代以前で男性のチェスマスターと互角に渡り合えたのはヴェラ・メンチク(Vera Menchik)さんただ一人だったというような記述も見られます。
メンチクさんは、初代女子世界チャンピオン(1927~1944年)で、女子大会では文字通り無双状態の強さでした。彼女が生きていた時代の大会は全てチャンピオンを防衛、対女子成績では78戦中負けたのはたった1回でした。
それでも対男性トッププレイヤーの成績は、将来世界チャンピオンになる若かりし頃のマックス・エイベさんに5戦中2勝1分けくらいで、現役の世界チャンピオンや、その候補生には一度も勝てたことはありませんでした。
男性トッププレイヤーに対して分が悪かったものの、他のマスタークラスには十分通用したので弱いはずはないのですが、当時歴代女性最強のメンチクさんが勝てなかった男性が何人もいたということで、長らく男性社会というイメージがついてまわってしまったようです。
メンチクさんは1944年に空襲で亡くなります。
女性が公開対局で現役の世界チャンピオンを破るのは1998年のユディット・ポルガーさんまで待つ必要がありました。
現代と違う棋譜の表記方法
ナイトをキングビショップスリーというようなセリフがありましたが今ではほとんどの人が「は?」と思う棋譜の表現方法です。
記述式と代数式があり、2021年現在は代数式が主流ですが、50年60年代当時は記述式が主流だったと聞きます。
ちょうどその頃、アメリカの後の世界チャンピオン、ボビー・フィッシャー(Bobby Fischer)の直筆の棋譜は記述式で私にはわかりづらかった覚えがありますね。
キングを倒す行為の意味
負けを認めますという行動。2021年現在のトッププレイヤーの対戦ではあんまり見ない印象ですが、日本の羽生善治さん(有名な将棋棋士ですがチェスも国内トッププレイヤー)あたりは、わかりやすさを重視してなのか負けた時はよくキングを横に倒している映像を見ることがあります。
握手をして終わるタイプは見慣れてないと勝敗が決まったのか引き分けたのか分かりにくく、キングを倒してくれると見てる分には非常にわかりやすくて助かります。
60年代のレーティング1800って実力どのくらい?
チェスファンなら知っている人もいるかもしれないですが、1960年代はまだ国際レーティングが導入される前の話です。
ということで、ここで言われるレーティングはアメリカ国内のレーティングだと思われます。
レーティングが1800を超えるプレイヤーが3人もいるということが主人公の大会初陣で触れられていますが、1800ってどのくらいよ?という疑問。
まずチェスマスターとは当時この数字が2300以上の人でした。
調べたところによると、前述の1972年に世界チャンピオンに上りつめるボビー・フィッシャーさんが、1956年に13歳でチェス全米アマチュア選手権に出場して88人中21位タイだったそうなのですが、当時のフィッシャーさんのUSCF(米国チェス連盟)レーティングが1726でした。
そして、フィッシャーさんが全米ジュニアチャンピオン(21歳未満の全米チャンピオン)になったのもこの時期です。
次に発表されたフィッシャーさんのレーティングが2231なので、ちょっとそれより上寄りに見た方がいいかもしれませんが、21歳以下のアメリカ国内トップレベルが1800周辺だと言えそうです。
そりゃあ若者に見える人には1800以上がいるからやめとけとは言いたくなりそうですね。
以上、2話までのことで疑問に思いそうな常識を解説しました。
3話以降もまたネタがたまったら書きたいと思います。