チェス雑記エッセイ

将棋チェスから見る東西文化の違いをまとめる

今回の話題は文化の違いです。
似ていると言われる将棋とチェスから見る文化の違いを考えたので、エッセイとして書きたいと思います。
ではよろしくお願いします。

将棋とチェスは従兄弟の関係

ご存知の方も多いかもしれませんが、西洋のボードゲーム『チェス』と日本の盤上遊戯『将棋』は、同じインドのゲームを起源に持つ、言ってみれば従兄弟(いとこ)のような関係のゲームです。
どうりで似ているわけですね。

将棋とチェスの似ているところ

  • 先手後手で交互に手を決定して進行するルール
  • 先手と後手で平等な戦力が与えられている
  • 駒それぞれに動かすことが可能な範囲が決まっている
  • 駒を盤上から排除する、取るという概念がある
  • 王様にあたる最重要の駒を打ち取ると勝利

など多数。
逆に違いはどこにあるのか。

将棋とチェスの違うところ

  • 取った駒:後に戦力として使用可能(将棋)、戻らない(チェス)
  • 王を詰める以外の勝敗条件:入玉宣言法の存在(将棋)、なし(チェス)
  • 特殊ルールの扱い:特殊な場合禁止(将棋)、特殊な場合許可(チェス)

など多数。
少しわかりにくいので解説を入れます(飛ばしてもOK)。

ご存知の方も多いかもしれませんが、将棋は取った駒を持ち駒として後に自分の戦力として使用可能です。対してチェスでは取った駒はもう盤上に戻ることはありません。
逆にこれしか違いを知らないという人も多いかと思いますので他もしっかり解説します。

王や玉を詰める以外の勝敗条件の有無について、将棋では入玉宣言法というルールが存在します。
要は将棋では王を詰まさなくても条件さえそろえば勝ちになるルールが存在しますよと言うことですが、対するチェスでは詰み(チェックメイト)が唯一の勝敗条件となっています。
チェスで詰みが起こらないと判断できる局面になると全て引き分けに分類されるのです。
そこの基本ルールから派生した持ち時間に関する実践ルールでも、ルール上チェックメイトがどうやっても不可能と分かる状態であれば、時間切れになっても引き分けになります(負けにならない)。

ただし、チェスには必ず決着をつけなければならないとき用のルールとして、開始前に制限時間に優劣をつけて引き分けを後手勝利に扱うアルマゲドンというものが存在しますが、制限時間を絡めたルールは競技化するためのルールであって、大もとのルールではないのでここでは無しとしています。

特殊ルールの扱いについて。将棋では特別に禁じ手として、特別な時こういうことしちゃいけないよ。というルールが多い印象です。
例で言うと二歩や連続王手の千日手、打ち歩詰めの禁止などがそうです。

対するチェスでは特殊ルールと言えば、特別な時こういうことしてもOKだよ。というルールが多い印象です。
例で言うと、キャスリングやアンパッサンのルールですね。

 

文化の違いはルールからは隠れている可能性

さて、ここまでルール上の違いを言いましたが、こんなもので文化の違いが知れるのでしょうか?
私個人の意見では、知れるわけがないと思っています。

ルールはあくまでゲームが面白くなるように変わってきたものであってそこに文化を当てはめるのはナンセンスではないかと考えます。
たまに、将棋の国日本は戦争で捕らえた者を生かして自軍にそのままの地位で迎え入れる所みたいな意見を見るのですが、私は否定的です。

 

例えば、日本のレーシングゲームのマリオカートで赤甲羅とか投げたりしますけど、それを見て「あ~日本人はレース中そういうのよく投げる文化あるよね」とはならないですよね?
あれは、そういうシステムがゲーム上存在すると面白いからあるわけで、そういう文化が根付いているから導入されたわけではないはずです。
それこそゲームと現実の区別付かんのかいとなりえます。

  

各種盤上のルール外に隠された文化の違い

しかし、私は盤上のルール外になら文化の違いが多少見ることができるのではないかと思っています。
例えば作法やルールから外れた時の扱い方です。

 

駒の並べ方

>駒の並べ方
ゲームを始める前の初期配置に並べる駒の並べ方に大橋流、伊藤流など礼法があり、プロは全員実行しているというのは将棋の大きな特徴ではないかと思われます。
ちなみにチェスでは特に決まりはありません。しいて言うなら、強い人は何度もプレイして並べなおしているため、強ければ強い人ほど初期配置に並べるスピードが速いと言われますが、順番はみんな自己流です。

ちなみに流派を名乗ることもチェスではめったにありません。

チェスは確かにスポーツです。一方将棋は、茶道や生け花のように日本の伝統文化の一つであるためすこし違います。

by 羽生善治

羽生善治将棋永世七冠がチェスは頭脳スポーツであり、将棋は伝統文化である。と言った部分が強く表れるところではないでしょうか。

 

引き分けの扱い

チェスでは引き分けというのは結果の一つであり、引き分けに終わったという実績が残るのが普通です。記録上は0.5勝0.5敗が同時に加算されることがチェスでは多いです。

一方将棋では引き分けに相当する持将棋や千日手というのは成績に入らず、通常は必ず指直しという再戦があります。つまり決着がつくまで戦うのです。

 

ルール違反時の処遇

ルール違反、ルールにない手を指した場合どうなるか知ってますか?
例えば斜めに動かす駒を着地点の一マスずれた場所に動かしてしまった場合など。

 

チェスの場合、制限時間のない対戦では『ルールにない手=存在しない手』と解釈されておかしくなったところからやり直しましょうとなります。

将棋の場合は指摘を受けたら即負けです。

 

ルール不備の扱い

将棋やチェスは完成されたゲームと思いがちですが、思わぬところにルールの穴が存在することがあります。
通常そんなところ気にしないだろと思うようなところであってもルールの不備は不備です。

 

チェスの場合は不備が見つかるたびに、公式戦でのルールは追加や改定がされていたはずです。現代でもジョークチェスプロブレム(joke chess problem)と検索すればルールに不備があった頃の不備指摘がヒットします。
一方将棋ではめったにルールは変化しません。近年500手指了ルールなど導入されたそうですが、まだチェスに比べるとまだまだ不備は多いはずです。

 

先手後手の優劣是正の扱い

将棋やチェスはターン制というルール上どうしても先手と後手でほんの少し有利不利が出てしまいます。

 

ざっくり言うとプロではチェスは先手55%、後手45%くらい、将棋もたしか先手52%、後手48%くらいの勝率になると言われていてこの5%とか2%はどうするよ?と賞金などかかってるときは特に問題があります。

 

チェスではノックアウトトーナメントや番勝負など二人の間で決着が付かないといけない場合は対戦を偶数回にして勝数差が出るところまで続けることを基本にしようというところが多いです。
もし対戦回数に制限がある(何日続くかわからん勝負に会場おさえるのが難しいなど)場合は前述のアルマゲドンが行われることもありますが、私が知る限りは大体のところで何らかの配慮があります。

将棋の場合は、先手に優位性があることを半ば認めながら、タイトル戦など大きな番勝負でも後手を持つことが多い側に配慮は特にないように思えます。

 

まとめ

もう前述の羽生善治さんの言ってたことの意訳、チェスは頭脳スポーツ将棋は伝統文化という一言に尽きます。

 

チェスは良い言い方をすれば頭脳スポーツゆえに厳格なルールのもと競い合う、そういう世界に思えました。
悪い言い方をすればルールブック通りにすれば何でもありなので、ルールを厳しくしないといけない界隈という感じでしょうか。

一方で将棋は良い言い方をすれば伝統文化の一面が強いため清く正しくあること、それが個々に求められるし前提にある世界に思えます。
悪い言い方をすれば、伝統で今まで大体うまくいってるから細かいことは誰も気にしない世界で気にしても言い出しづらい界隈という感じですかね。

 

同じゲームを起源に持ついとこ同士でも、こう違いが現れるというのは面白いですね。
というわけで今回は私のエッセイ(思ったことをまとめた文)を書かせていただきました。
ではまた次回。

ABOUT ME
くろーりん
チェスブロガー、くろーりん。 チェスのルールを知らなくても楽しい。 ルールを知ってるともっと楽しいブログを目指します。 チェス情報発信歴10年くらい。 チェスの強さはいまいちなので、雑学やTIPSなど「チェスって面白い」と思っていただけるブログ制作を心がけます。 (当ブログはリンクフリーです) Vtuberとしてyoutubeで配信もしているので、ここの下のyoutubeアイコンからぜひお越しください。

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